昭和40年(1965)、文化館でわが国最初の横井金谷(よこい きんこく)遺作展が開かれた。「金谷上人御一代記」は金谷が自らの半生を挿画入りで描いた絵巻物である。全7巻からなるこの物
語は、金谷の出生から僧侶としての修行、破戒、放浪といった流れで進み、スピード感あふれるストーリー展開に、思わず引き込まれていく。
金谷は、現在の草津市下笠町に生まれた江戸時代後期の文人画家で、浄土宗の僧侶だった。一般には与謝蕪村の門人として扱われ、紀楳亭(きばいてい)と並んで「近江蕪村」とも呼ばれているが
、直接師事したことはなかった。しかし、金谷は常に蕪村を意識して、その画風を慕い、画題、画面構成などを写しながら、そこに自然の荒々しさを加え、金谷独自の世界を築き上げている。その
生涯にどれだけの絵を描いたかわからないほど多くの作品を残しており、仏画、山水画、人物画、俳画とその内容も多彩である。