琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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近江の文化財

 老松図(ろうしょうず)   貫名海屋筆  1幅      江戸時代  本館蔵

  三人の優れた書家を「三筆(さんぴつ)」といい、一般的には、平安時代に活躍した嵯峨天皇・弘法大師空海・橘逸勢(たちばなのはやなり)の三人のことを指すが、この他にも、三人の書の名人を挙げて「○○の三筆」として独自に選んだものがある。その中で、「幕末の三筆」の一人とされるのが貫名海屋(ぬきな かいおく)である。
 海屋は、江戸の市河米庵(いちかわ べいあん:1779~1858)・巻菱湖(まき りょうこ:1777~1843)とともに、幕末期を代表する書家であるが、儒学者、文人画家としても名を馳せた。
 安永7(1778)年に生まれ少年期より故郷で書画や儒学を学んだ海屋は、絵画については、叔父にあたる藩御用絵師矢野典博(?~1799)から狩野派の画を学び、のちには明の画人銭穀(せんこく)の「真景山水図」を見て文人画に傾倒していったとされる。また、書は徳島の西宣行(にし せんぎょう:1764~1826)について中国北宋の書家米元章(べい げんしょう)の書風を学び、儒学については、木村蘭皐(らんこう:1773~1849)や高橋赤水(1769~1848)について学んだ。
 海屋は、浦上春琴(しゅんきん)、中林竹洞(ちくどう)、山本梅逸(ばいいつ)ら、当時一流の文人画家との交わりの中から文人画の技法を磨き、精緻な山水画の他にも墨竹や菊・松などの題材を好んで描いている。田能村竹田はその著書の中で、頼山陽や野呂介石と並べて海屋の絵を激賞している。また、門弟の中からは、貫名海雲・日根対山(たいざん)・谷口藹山(あいざん)など優れた文人画家が育っている。

 本作品は、海屋が好んで描いた松図で、画外にまでのびる力強い老松を描いたもので、墨色鮮やかな墨画の妙のにじみ出た秀作である。嘉永6(1853)年、海屋76歳の作品。

※「老松図」は、令和3年(2021)2月6日から3月21日まで、県立安土城考古博物館で開催された、地域連携企画展「琵琶湖文化館の『博物誌』―浮城万華鏡の世界へ、ようこそ!―」に出展されました。