琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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近江の文化財

 夏山飛瀑図     中林竹洞筆   1幅     江戸時代   本館蔵

  画家の中林竹洞(なかばやし ちくどう)(1778~1853)は、名古屋の産科医の長子として生まれました。名は成昌、字は伯明、竹洞・沖澹などと号しました。はじめ名古屋南画界の先駆者である山田宮常に師事し、やがて尾張の富商神谷天遊の援助を受け、中国画の模写に没頭し、中国文化への憧憬の念を強めていきます。その後は、特定の画家に師事することもなく、天遊の下で出逢った山本梅逸と、ともに切磋琢磨しながら画技を高めていきました。四十歳代後半、画家として致命的な眼病を患いましたが、見事に復活し、若年時より強い作品を描くようになります。
 竹洞は、生涯をかけて理想の文人画を追求し、自ら理想の文人になろうと中国画を追い続けました。中国画の和様化、あるいは日本の風景を中国画法へ昇華させた功績は大きいと言えるでしょう。

 本図は、竹洞の得意とする山水画で、スケールの大きな自然がよく描かれています。山間より勢いよく流れ落ちる滝の水しぶきによって、山全体に霞のかかったような風景を見事に描いています。 墨一色を用い、その濃淡、ぼかしなどの技法を駆使し、立体的で単色でありながら色彩を感じさせるという、水墨山水画の妙味が遺憾なく発揮された作品となっています。

 
 紙本墨画 掛幅装
 縦152.6cm 横72.7cm
 江戸時代 天保12年(1841)作

( 上野 良信 ) 


※「夏山飛瀑図」は令和5年(2023)2月4日から4月2日まで、滋賀県立安土城考古博物館で開催された、地域連携企画展「琵琶湖文化館収蔵品にみる四季」に出展されました。