琵琶湖文化館 the Museum Of Shiga Pref
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近江の文化財

中井弘 書跡 「席上走筆」   1幅  近・現代(明治)
(なかいひろむ・ひろし しょせき 「せきじょうそうひつ」)
絹本墨書 本館蔵
 法量 縦 112.3 × 横 52.0 cm


 第三代滋賀県知事である中井弘(なかいひろむ・ひろし 1838~1894)は、薩摩藩鹿児島城下の藩士の家に生まれました。若くして脱藩し、後藤象二郎の助力によりイギリスへ密航留学し、維新後、イギリスにて日本公使館書記官を務めるなど、外交面で活躍しました。明治17年(1884)7月、滋賀県令(現在の知事)となり、県下ではじめて商業学校を設立し商業教育に力を入れ、また琵琶湖疎水工事に着手、建設を推し進めました。

 琵琶湖文化館に所蔵される書跡は、伊藤博文、松方正義等と東京・両国にて宴席に出た際に、明時代の書家・文徴明の書と同じ韻を踏んで詩を作り、その場で揮毫した席書です。上質な絹本に、七言古詩56文字を澱みなく流れる筆捌きで書き上げたもので、江戸城を示す「卅六城門」の開城から維新政府への時代の転換を表したものです。

 中井弘の先代の滋賀県令である籠手田安定は、琵琶湖疎水計画の実施に反対しています。その理由は、景観の保全問題、滋賀県が京都府下に編入されることへの危惧でした。計画実施の支障となると判断されたためか、籠手田は県令を辞任し、元老院への転出を余儀なくされます。中井が籠手田の施策とは異なり、琵琶湖疎水計画を推し進めることができたのは、薩摩藩出身という地縁と、伊藤、松方等との関係性の構築が背景にあったと思われます。

 

( 寺前 公基 )
 


 

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